STUDY
副作用報告制度に関する研究

医療従事者からの医薬品副作用報告の推進に関する取り組み

本邦における医薬品安全性評価体制として、「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度」があります。本制度は、自発報告に基づく点や、母数の把握が不可能な点などの限界を有していますが、世界的にも医薬品安全性情報収集の中核を担うシステムです。しかしながら、本システムを介した本邦の自発報告の大部分が製薬企業からのものであり、医療機関からの報告はごく少数です。そこで、眞野薬剤部長・小原准教授らの研究班では、本制度の利活用促進に関する調査・研究を行ってきました。その直近の成果として、「医薬関係者における医薬品・医療機器等安全性情報報告の質向上に関するガイダンス案」を作成しました。

2022-2024年度 日本医療研究開発機構 医薬品等規制調和・評価研究事業
「医薬品副作用に関する医療機関報告の質の向上推進に関する研究」(代表:小原拓)

2017-2018年度 日本医療研究開発機構 医薬品等規制調和・評価研究事業
「医薬品開発等における安全性向上のため、医薬関係者からの副作用等情報の活用方策に関する研究」(代表:眞野成康)


2022-2024年度


日本医療研究開発機構医薬品等規制調和・評価研究事業
「医薬品副作用に関する医療機関報告の質の向上推進に関する研究」

研究開発代表者 東北大学 小原 拓
研究開発分担者 東京薬科大学 益山 光一
亀田医療大学 舟越 亮寛
東北大学 眞野 成康


別添.「医薬関係者における医薬品・医療機器等安全性情報報告の質向上に関するガイダンス案



研究開発の概要


研究期間内に、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度の継続的な周知・啓発および認識調査、医療現場における副作用のスクリーニングツールの作成・社会実装、副作用の評価・報告の効率化のための好事例の収集・共有、「医薬関係者からの副作用報告の質向上のためのガイドライン案」のフィージビリティ調査、継続的な副作用報告の質のモニタリングを行い、「医薬関係者からの副作用報告の質向上のためのガイドライン」を確立するとともに、医薬関係者に求められている市販後医薬品の安全性監視への関与の在り方を提案することを目的に、医薬品副作用に関する医療機関報告の質の向上推進に関する研究を行った。


  • 1.医療現場における副作用のスクリーニングツールの作成・社会実装

    スクリーニングツールの作成等の対応を行って服薬指導を行うことに参加する地区薬剤師の参加を選定し、それぞれの地域薬局においてツールを利用する薬剤を決定後、実装を行いその評価等を行った。具体的な社会実装は次のとおりである。鹿児島県薬剤師会では、薬剤師会の会員に参加協力を募集し、調査対象医薬品は、セマグルチド、ダパグリフロジン、サクビトリルバルサルタン、ミロガバリンの4薬剤で実装を行った。岡山県薬剤師会では、実施方法について調整の結果、サエラ薬局倉敷店の協力を得て、実装することとなった。薬剤は、これまでの新規処方率等を勘案し、タリージェとデュロキセチンの2剤を選定して実装した。神奈川県薬剤師会では、リスクマネジメント委員会の先生方が参加し、エンレスト、ジクトルテープ、ツイミーグ、リフヌア、デエビゴを選定後、各薬局でさらにその中で選定して実施した。高知県薬剤師会では、5名の若手薬剤師の協力を得て、エンレスト錠、タリージェ錠、ベオーパ錠を対象として実装を行った。

  • 2.「医薬関係者からの副作用報告の質向上のためのガイドライン」案のフィージビリティ調査

    本研究課題班メンバーにより、AMED研究班「医薬関係者による副作用報告の質向上に向けた情報連携のあり方の研究」(代表眞野成康)によって2021年度末に取りまとめられた「質の高い副作用報告を実現するためのガイドライン(案)」をもとに、「医薬関係者からの副作用報告の質向上のためのガイドライン」案に掲載する27個のStatement案(基準:1、質:1、ツール:2、情報:1、教育:4、医療機関の対応:13、薬局の対応:5)を抽出した。その後、Statement検討会5回、班会議3回の中で、Statement案の表現・内容のさらなる精査、Statement案への解説付与の要否・内容、ガイドラインという名称の適否、利用対象者の想定等について議論し、最終的に23個のStatement案に整理した。そのうえで、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会、医療の安全と質学会に協力を仰ぎ、ガイドラインのstatement作成やquality indicator作成などに使われている手法であるDelphi法に基づく意見聴取・改定を2回繰り返した。その結果、提案したStatement案23個すべてに対して、7割以上の評価者が「採用すべきである」または「やや採用すべきである」と評価した。Delphi法における評価者からの意見等をもとにStatement案を修正した。また、本研究班主催研修会および関連学会のシンポジウム・研修会等において、多様なステークホルダーを巻き込んでStatement案の抽出・精査およびガイダンス案の作成を行っているプロセスを積極的に共有・配信した。

  • 3.医薬関係者からの副作用報告の質向上のためのガイドラインの作成

    本ガイダンス案は、「医薬関係者からの副作用報告の質向上のためのガイドライン案のフィージビリティ調査」を通して精査されたStatement案に対して、それぞれ解説を追記の上、研究班全体で議論したうえで、今後、関連学会のシンポジウム・研修会等において、積極的に共有・配信するとともに、AMED研究班の活動成果として、規制当局からの発信に関しても働きかけていく予定である。

  • 4.医薬品・医療機器等安全性情報報告制度の継続的な周知・啓発

    (a) 研修会の開催
    1年目:講習会を年2回開催について1回は好事例の周知と合わせて開催することに変更した。2023年1月28日(AMED研究班講演会)「テーマ:副作用の拾い上げから報告まで」として開催した。参加登録119名、実際の参加者79名で、アンケート結果はおおむね良好であった。2023年2月23日「テーマ:副作用報告の意義について」を「後発品、ポリファーマシー、医療連携」に絞り開催した。参加者121名で、アンケート結果はおおむね良好であった。紙面周知啓発は本AMED小原班の活動を薬事日報へ寄稿し周知啓発を行った。
    2年目:2023年12月23日(土)14:00~17:00に開催した。参加者191名(医療機関141名、薬局10名、製薬企業41名)であった。質疑としては医療機関からは「効率的な報告方法の開発」、「PMDA、製薬企業での評価・活用状況の具体的内容の開示」を求める声が多かった。一方で、「製薬企業への症例報告時の個人情報の取り扱いに対する不安」、「副作用報告制度と救済制度の違い」など引き続き制度等のリテラシー向上には継続的な周知・啓発が必要であることが明らかになった。医療機関、製薬企業にとって共通した意見は「効率的な報告方法の開発」であり、「医療機関、製薬企業での取り組みについて情報共有すること」の機会として研修会について評価が高かった。その他継続的な周知・啓発について中小病院ならびに薬局におけるリテラシーの向上の機会を求める声があった。
    3年目は、1,2年目と同様に副作用報告制度について制度から事例、日薬連、厚労省を演者として啓発研修会を2024年12月21日(土)にハイブリッド(現地・WEB)開催した。

    • 事前参加登録324名/・当日参加視聴248名
    • 事前参加登録時に日頃副作用副反応報告に悩んでいることについて意見収集を行った。
    • 参加者の質疑等をアンケート回収し評価は、啓発事業は引き続き継続要望が多く、各医療職の理解度をあげ行動変容につなげることが重要であることを再確認された。
    (b) 誌上シンポの開催
    1年目は、雑誌で特集を組み知識レベルの啓発周知を行った。
    2年目は、薬事日報の協力を得て知識レベルについて誌面で啓発を行った。
    3年目については書籍の発刊ではなく、研修会の内容を要約した形で薬剤師等へ広く啓発することを目的として、薬事日報社に依頼し紙面(約50,000部、電子版含む)啓発周知を行った。

    (c) 啓発用資材作成
    1年目は、厚生労働省の副作用報告制度の啓発ポスター次年度のポスター内容の構成について提案を行った。次年度についても報告方法が電子化、副作用報告基準について強調する形の方針で進めることになった。さらにPMDAで啓発周知動画を令和5年度にリリースする企画があがり、令和4年度の研究開発項目として、動画シナリオからイラスト構成等について助言提案を行った。なおPMDA動画については令和5年度引き続きリリースされるまで助言提案を行っていくこととした。
    2年目は、啓発普及のために厚労省医薬局安全対策課との連携での啓発資材の作成配布を行った。2022年度に引き続き、積極的に報告がのぞましい対象(CTCAEのGrade3以上の症例、RMPの重要な潜在的リスクの事象、特定の背景を有する患者における事象)を記載する。あわせて、電子報告のメリット(迅速な安全対策につながる)を強調しつつ、報告された副作用疑いが安全対策につながっていることを示す方針で都度協議した。
    3年目についても1,2年目と同様に厚生労働省は発出している「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度」の啓発ポスター(紙面・電子版)を厚労省医薬局安全対策課と意見交換(5-8月)し更新発行(9月)し、社会との対話・協働の推進を進めた。

  • 5.医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に関する認識の継続調査

    日本病院薬剤師会が毎年行っている現状調査において、副作用報告に関する項目を継続的に調査いただいた結果、院内で発生した副作用を一元管理する部署を設置している医療機関の割合は、2015年から2020年の調査では、32.2%から54.8%に増加傾向を示しており(J Clin Pharm Ther. 2022;47:1240–1248.)、その傾向は、2022年から2024年の調査においても52.8%から57.2%と高い水準を維持していることが明らかになった。株式会社ツルハホールディングス所属の薬剤師を対象とした調査においては、「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度」を理解している割合は46.8%から58.0%に増加し、医薬品で生じたと思われる副作用を厚生労働大臣(窓口はPMDA)に報告したことがある割合はともに7.2%であった。得られた研究成果は、本研究班のメンバーによって、所属先ホームページへの掲載や関連学会のシンポジウム・研修会等での報告を通して、積極的に配信してきた。

  • 6.副作用の評価・報告の効率化・質向上のための好事例の収集・共有

    副作用の評価・報告の効率化・質向上のための好事例の収集・共有を目的に、AMED委託研究 医薬品等規制調和・評価研究事業 副作用報告研究班 WEB講演会を毎年度一回ずつ開催し、参加者はそれぞれ79名、44名、55名であり、活発な質疑応答が行われた。令和6年度に開催した研修会の詳細は下記のとおりである。
    開催日:2024年12月7日(土) 13:00~14:30、テーマ「質の高い医薬品副作用報告に向けて」、話題提供(13:00₋13:30)「医薬品副作用データベースからみえてくるもの」慶應義塾大学薬学部 医薬品情報学講座特任講師 土屋雅美先生、講演1(13:30₋14:00)「当院における医薬品副作用モニタリング・報告の現状」済生会横浜市東部病院 薬剤部医薬品情報室・主任 大幸淳先生、講演2(14:00₋14:30)、「副作用の早期発見や再発防止に向けた医薬品適正使用の取り組み」九州大学医学部附属病院 薬剤部薬品情報室・薬剤主任 永田健一郎先生

  • 7.継続的な副作用報告の質のモニタリング

    継続的な副作用報告の質のモニタリングとして、本邦の副作用報告データベース(JADER)に基づいて、vigiGradeによる質評価および本邦の患者副作用報告制度により収集された自発報告(患者報告)との比較を行った。vigiGradeによる質評価においては、2023年7月報告分までのデータを用い、質が高い報告の割合は増加傾向を示すこと、この傾向は特にワクチンに関する報告で観察されることなどを明らかにした。患者報告との比較においては、2019年3月~2024年3月までの5年間における患者報告を解析し、同期間のJADER内の報告と比較したところ、患者の属性や報告された有害事象、医薬品に違いがみられた。また、患者報告、医療従事者報告双方で、新型コロナウイルス感染症の影響により報告トレンドが変化していたことを明らかにした。これらの結果は現在国際的学術誌に投稿中である。本研究成果は、患者・市民における医薬品安全性確保に関する積極的な参画の必要性も示唆しており、患者・市民の参加のみならず、本成果の活用に向けて参画いただけるよう、患者・市民の集まる場で意見交換を行った。

意義
本研究班においては、2021年度末に取りまとめた「質の高い副作用報告を実現するためのガイドライン(案)」をもとに、日本病院薬剤師会および日本薬剤師会の協力を得て、客観的評価の末、「医薬関係者における医薬品・医療機器等安全性情報報告の質向上に関するガイダンス案」を作成した。今後、本ガイダンス案を臨床現場で活用することによって医薬関係者からの医薬品・医療機器等安全性情報報告の質向上が期待される。


2017-2018年度


日本医療研究開発機構 医薬品等規制調和・評価研究事業
「医薬品開発等における安全性向上のため、医薬関係者からの副作用等情報の活用方策に関する研究」

研究開発代表者 東北大学 眞野 成康
研究開発分担者 東京薬科大学 益山 光一
東北医科薬科大学 目時 弘仁
明治薬科大学 門田 佳子
亀田医療大学 舟越 亮寛
東北大学 小原 拓

医療従事者からの医薬品副作用報告の推進に関する取り組み

研究開発の概要

  • 1.医療機関報告手順の提案・検証 (東京薬科大学 益山光一)

    副作用報告の多い病院等の調査内容を踏まえ、副作用報告を実施するための医療機関内での体制及び対応等についての先行事例を副作用ガイダンス骨子に追加記載した「ガイドライン案」について、日本医師会及び四病協等の代表の先生方からなる本分担研究班会議において検討を実施し、「副作用報告の手順に関するガイドライン案」を作成した。

  • 2.既存の通知・副作用等評価方法の精査 (東北医科薬科大学 目時弘仁)

    医療機関報告の基準の検討における「報告することが望ましい副作用等の精査」に関しては、既存の通知・副作用等評価方法の精査によって、医薬品等の製造販売業者等による国への副作用等報告に関する「第80号通知」、「厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル」、「有害事象共通用語規準(CTCAE)日本語訳JCOG版」を副作用等報告基準案の基盤とすることとした。なお、報告基準案の具体的なグレード分類の基盤には、下記の理由で、CTCAEを用いた。

    • CTCAEにおいては、有害事象が5つのグレードに分類されており、第80号通知における重篤度分類基準の3つグレード分類よりも、グレード判定の基準がより明確である。
    • CTCAEv5に記載されている有害事象名は合計837種であり、第80号通知に記載されている有害事象530種に加え、さらに詳細な有害事象が記載されている。
    • CTCAEは、有害事象のグレード分類として医療機関で既に広く認識されているため、これを利用することでより早期の普及が見込める。
    • 『有害事象報告に関する共通ガイドライン(JCTN-有害事象報告ガイドライン)』やアメリカ食品医薬品局(FDA)の『(製薬企業)業界への指針:開発後及び市販後の臨床研究において必要とされる安全性データ収集の程度の決定』でCTCAEのグレード分類が引用されている。
    • CTCAEはMedDRAに対応しているため、収集された有害事象のコーディングが容易であり、解析が円滑になることが見込まれる。

    また、第80号通知の分類基準に記載があって、CTCAEv5に記載のない有害事象(別紙)(第80号通知記載の副作用約30種)については、MedDRAを考慮し、追記した。さらに、特に重篤化が特に懸念される副作用については、重篤副作用疾患別対応マニュアルの医療従事者向けの早期発見のポイントを追記した。

  • 3.海外の各種基準の精査 (明治薬科大学 門田佳子)

    副作用報告制度、報告方法について各国比較を行い、日本の報告制度・方法の問題点を検討した結果、各国報告対象や報告方法など共通している部分が多くあったが、オンライン上での報告や報告用紙上での説明など日本にはない部分もあり、参考になるのではないかと考えられた。今後各国を参考に報告方法などを改善することで、報告数の増加につながるのではないかと考えられた。 日本と海外の医療者向け報告様式について比較し、様式の記入のしやすさ、改善点等の検討を行った結果、報告対象製品や報告内容に関して細かい違いはあるものの、大きな違いは見られなかった。日本は他の4カ国と比べて自由記入欄が少なく、選択式や一問一答形式で回答を得る項目が多かった。そのため、他の国と比較し、比較的短時間で記入が可能であると考えられた。今回比較した日本以外の国では、特に収集すべき情報に関して、どんな症例が報告対象であるか、用紙に記載されていた。日本はPMDAのサイト上でも用紙でも具体的な例は示されておらず、重篤性や報告対象となる症例に関して具体的に提示することで、報告を促すことが可能であると考えられた。

  • 4.RMPの応用可能性の検討 (亀田医療大学 舟越亮寛)

    血糖降下薬および抗悪性腫瘍薬の医薬品リスク管理計画(RMP)の記載を副作用等報告の基準として扱うことの可能性および課題を検討し、RMP簡易版の活用により副作用・有害事象を迅速に報告することができる可能性や、企業によってRMPの記載内容の表現が異なるという課題が明らかになった。現状のRMPを副作用等報告基準案にそのまま用いるのは時期尚早であり、RMP内で使用されている用語の統一などの必要性が明らかになった。

  • 5.DEM事業等の既報告例の精査 (東北大学 小原拓)

    「報告することが可能な副作用等の精査」における「DEM事業等の既報告例の精査」に関しては、保険薬局において、医薬品使用と関連する自覚症状の把握が可能であることを改めて確認することができたと同時に、モニタリング・報告すべき有害事象名を明示することによって、有害事象のモニタリング・報告がより容易となる可能性が考えられた。また、薬剤師による副作用自発報告の質が医師による自発報告の質と遜色ないことが確認された。

  • 6.報告基準案の一般化可能性の検討 (東北大学 小原拓)

    学会発表を2件、シンポジウム等を19件開催し、検討中の基準案等の情報共有を通して、基準案等に対する意見収集を行った結果、既知でかつ非重篤・軽/中症等症の場合には、医薬品等製造販売業者への報告とすることにしてはどうかや、医療現場の負担軽減についても考慮すべき等の意見を取集することができた。

  • 7.検討会等における議論に基づく課題全体としての研究成果 (東北大学 眞野成康)

    各分担研究者からの成果・報告等に基づいて、研究班全体の班会議を計5回、一部の分担研究者間等による打ち合わせ・班会議を計12回、行政通知発出に向けた規制当局関係者との打ち合わせを計7回実施し、第80号通知・CTCAE・重篤副作用疾患別対応マニュアルを参考とする(a)「副作用の重篤度・重症度分類基準案」、その基準案等を考慮した(b)「医薬関係者が報告すべき副作用情報の基準案」、副作用ガイダンス骨子を基本とする(c)「副作用報告の手順に関するガイドライン案」をそれぞれ作成した。

    • (a)「副作用の重篤度・重症度分類基準案」
      平成4年の第80号通知には、副作用の重篤度を1-3の3つのグレードに分類した「重篤度分類基準」が用いられている。ただし、個別の副作用症例の重篤度は副作用症状の種類のみでなく、患者の全身状態、原疾患・合併症の現況、転帰等を勘案して総合的に評価されるものであることに留意すること、とされている。その後、平成7年にはICH-E2Aガイドラインに、重篤な有害事象または副作用の定義が示された。また、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度においては、医療従事者に対して、転帰が不明などの重篤度の判断が困難な段階であっても自発報告することを求める必要があると考えられるため、ある特定の事象の強さ(激しさ)を表現する重症度も、報告基準の中で触れる必要があると、考えられる。さらに、現在の重篤度および重症度の定義としては、平成4年の第80号通知における重篤度分類は、重症度分類と読み替えることができる。これらを勘案し、今回、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に基づいて医薬関係者が自発報告すべき副作用情報の基準として考慮する分類基準は、「副作用の重篤度・重症度分類基準」とした。なお、本検討の過程で、平成4年の第80号通知については、用語の定義の変遷等を考慮の上、修正等を検討する必要があることも明らかとなった。
    • (b)「医薬関係者が報告すべき副作用情報の基準案」
      後発医薬品の普及、医療環境の多様化への対応、ポリファーマシーへの対応などを背景とする、医薬関係者による副作用自発報告の意義を踏まえ、医薬関係者からの副作用報告をより一層適正化・迅速化するために、上記の「副作用の重篤度・重症度分類基準案」を作成の上、医薬関係者が報告すべき副作用情報の基準案を作成した。
    • (c)「副作用報告の手順に関するガイドライン案」
      分担研究班の中で作成されたガイドライン案に、他の分担研究者からの成果・報告等に基づいて作成された「医薬関係者が報告すべき副作用情報の基準案」を盛り込む形で、最終的な「副作用報告の手順に関するガイドライン案」を作成した。

    上記研究活動を踏まえて、「医薬関係者による医薬品副作用等の自発報告促進について」を取りまとめた。 本研究により、医薬関係者が特に医療機関報告を行うことが望まれる副作用等の基準や医療機関報告を行うための対応手順を明らかにすることによって、医療機関報告の件数増加および質向上につながることが期待される。