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副作用報告制度に関する研究

 

医療従事者からの医薬品副作用報告の推進に関する取り組み

    本邦における医薬品安全性評価体制として、「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度」があります。本制度は、自発報告に基づく点や、母数の把握が不可能な点などの限界を有していますが、世界的にも医薬品安全性情報収集の中核を担うシステムです。しかしながら、本システムを介した本邦の自発報告の大部分が製薬企業からのものであり、医療機関からの報告はごく少数です。そこで、眞野薬剤部長を代表とする研究班では、本制度の利用促進に関する調査・研究を行ってきました。その成果の一つとして、2019年に「医薬関係者による医薬品副作用等の自発報告促進について」をとりまとめ報告しました。

    2017-2018年度 日本医療研究開発機構 医薬品等規制調和・評価研究事業
「医薬品開発等における安全性向上のため、医薬関係者からの副作用等情報の活用方策に関する研究」

研究開発代表者    東北大学 眞野 成康
研究開発分担者    東京薬科大学 益山 光一
    東北医科薬科大学 目時 弘仁
    明治薬科大学 門田 佳子
    亀田医療大学 舟越 亮寛
    東北大学 小原 拓

研究開発の成果物

1.別紙.第80号通知の分類基準に記載があって、CTCAEv5に記載のない有害事象
2.医薬関係者による医薬品副作用等の自発報告促進について
  ・資料1.副作用の重篤度・重症度分類基準案
  ・資料2.副作用報告の手順に関するガイドライン案

研究開発の概要

1.医療機関報告手順の提案・検証 (東京薬科大学 益山光一)
    副作用報告の多い病院等の調査内容を踏まえ、副作用報告を実施するための医療機関内での体制及び対応等についての先行事例を副作用ガイダンス骨子に追加記載した「ガイドライン案」について、日本医師会及び四病協等の代表の先生方からなる本分担研究班会議において検討を実施し、「副作用報告の手順に関するガイドライン案」を作成した。

2.既存の通知・副作用等評価方法の精査 (東北医科薬科大学 目時弘仁)
    医療機関報告の基準の検討における「報告することが望ましい副作用等の精査」に関しては、既存の通知・副作用等評価方法の精査によって、医薬品等の製造販売業者等による国への副作用等報告に関する「第80号通知」、「厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル」、「有害事象共通用語規準(CTCAE)日本語訳JCOG版」を副作用等報告基準案の基盤とすることとした。なお、報告基準案の具体的なグレード分類の基盤には、下記の理由で、CTCAEを用いた。

・CTCAEにおいては、有害事象が5つのグレードに分類されており、第80号通知における重篤度分類基準の3つグレード分類よりも、グレード判定の基準がより明確である。
・CTCAEv5に記載されている有害事象名は合計837種であり、第80号通知に記載されている有害事象530種に加え、さらに詳細な有害事象が記載されている。
・CTCAEは、有害事象のグレード分類として医療機関で既に広く認識されているため、これを利用することでより早期の普及が見込める。
・『有害事象報告に関する共通ガイドライン(JCTN-有害事象報告ガイドライン)』やアメリカ食品医薬品局(FDA)の『(製薬企業)業界への指針:開発後及び市販後の臨床研究において必要とされる安全性データ収集の程度の決定』でCTCAEのグレード分類が引用されている。
・CTCAEはMedDRAに対応しているため、収集された有害事象のコーディングが容易であり、解析が円滑になることが見込まれる。

また、第80号通知の分類基準に記載があって、CTCAEv5に記載のない有害事象(別紙)(第80号通知記載の副作用約30種)については、MedDRAを考慮し、追記した。さらに、特に重篤化が特に懸念される副作用については、重篤副作用疾患別対応マニュアルの医療従事者向けの早期発見のポイントを追記した。

3.海外の各種基準の精査 (明治薬科大学 門田佳子)
    副作用報告制度、報告方法について各国比較を行い、日本の報告制度・方法の問題点を検討した結果、各国報告対象や報告方法など共通している部分が多くあったが、オンライン上での報告や報告用紙上での説明など日本にはない部分もあり、参考になるのではないかと考えられた。今後各国を参考に報告方法などを改善することで、報告数の増加につながるのではないかと考えられた。 日本と海外の医療者向け報告様式について比較し、様式の記入のしやすさ、改善点等の検討を行った結果、報告対象製品や報告内容に関して細かい違いはあるものの、大きな違いは見られなかった。日本は他の4カ国と比べて自由記入欄が少なく、選択式や一問一答形式で回答を得る項目が多かった。そのため、他の国と比較し、比較的短時間で記入が可能であると考えられた。今回比較した日本以外の国では、特に収集すべき情報に関して、どんな症例が報告対象であるか、用紙に記載されていた。日本はPMDAのサイト上でも用紙でも具体的な例は示されておらず、重篤性や報告対象となる症例に関して具体的に提示することで、報告を促すことが可能であると考えられた。

4.RMPの応用可能性の検討 (亀田医療大学 舟越亮寛)
    血糖降下薬および抗悪性腫瘍薬の医薬品リスク管理計画(RMP)の記載を副作用等報告の基準として扱うことの可能性および課題を検討し、RMP簡易版の活用により副作用・有害事象を迅速に報告することができる可能性や、企業によってRMPの記載内容の表現が異なるという課題が明らかになった。現状のRMPを副作用等報告基準案にそのまま用いるのは時期尚早であり、RMP内で使用されている用語の統一などの必要性が明らかになった。

5.DEM事業等の既報告例の精査 (東北大学 小原拓)
    「報告することが可能な副作用等の精査」における「DEM事業等の既報告例の精査」に関しては、保険薬局において、医薬品使用と関連する自覚症状の把握が可能であることを改めて確認することができたと同時に、モニタリング・報告すべき有害事象名を明示することによって、有害事象のモニタリング・報告がより容易となる可能性が考えられた。また、薬剤師による副作用自発報告の質が医師による自発報告の質と遜色ないことが確認された。

6.報告基準案の一般化可能性の検討 (東北大学 小原拓)
    学会発表を2件、シンポジウム等を19件開催し、検討中の基準案等の情報共有を通して、基準案等に対する意見収集を行った結果、既知でかつ非重篤・軽/中症等症の場合には、医薬品等製造販売業者への報告とすることにしてはどうかや、医療現場の負担軽減についても考慮すべき等の意見を取集することができた。

7.検討会等における議論に基づく課題全体としての研究成果 (東北大学 眞野成康)
    各分担研究者からの成果・報告等に基づいて、研究班全体の班会議を計5回、一部の分担研究者間等による打ち合わせ・班会議を計12回、行政通知発出に向けた規制当局関係者との打ち合わせを計7回実施し、第80号通知・CTCAE・重篤副作用疾患別対応マニュアルを参考とする「副作用の重篤度・重症度分類基準案」(a)、その基準案等を考慮した「医薬関係者が報告すべき副作用情報の基準案」(b)、副作用ガイダンス骨子を基本とする「副作用報告の手順に関するガイドライン案」(c)をそれぞれ作成した。

(a)「副作用の重篤度・重症度分類基準案」
    平成4年の第80号通知には、副作用の重篤度を1-3の3つのグレードに分類した「重篤度分類基準」が用いられている。ただし、個別の副作用症例の重篤度は副作用症状の種類のみでなく、患者の全身状態、原疾患・合併症の現況、転帰等を勘案して総合的に評価されるものであることに留意すること、とされている。その後、平成7年にはICH-E2Aガイドラインに、重篤な有害事象または副作用の定義が示された。また、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度においては、医療従事者に対して、転帰が不明などの重篤度の判断が困難な段階であっても自発報告することを求める必要があると考えられるため、ある特定の事象の強さ(激しさ)を表現する重症度も、報告基準の中で触れる必要があると、考えられる。さらに、現在の重篤度および重症度の定義としては、平成4年の第80号通知における重篤度分類は、重症度分類と読み替えることができる。これらを勘案し、今回、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に基づいて医薬関係者が自発報告すべき副作用情報の基準として考慮する分類基準は、「副作用の重篤度・重症度分類基準」とした。なお、本検討の過程で、平成4年の第80号通知については、用語の定義の変遷等を考慮の上、修正等を検討する必要があることも明らかとなった。

(b)「医薬関係者が報告すべき副作用情報の基準案」
    後発医薬品の普及、医療環境の多様化への対応、ポリファーマシーへの対応などを背景とする、医薬関係者による副作用自発報告の意義を踏まえ、医薬関係者からの副作用報告をより一層適正化・迅速化するために、上記の「副作用の重篤度・重症度分類基準案」を作成の上、医薬関係者が報告すべき副作用情報の基準案を作成した。

(c)「副作用報告の手順に関するガイドライン案」
    分担研究班の中で作成されたガイドライン案に、他の分担研究者からの成果・報告等に基づいて作成された「医薬関係者が報告すべき副作用情報の基準案」を盛り込む形で、最終的な「副作用報告の手順に関するガイドライン案」を作成した。

上記研究活動を踏まえて、「医薬関係者による医薬品副作用等の自発報告促進について」を取りまとめた。 本研究により、医薬関係者が特に医療機関報告を行うことが望まれる副作用等の基準や医療機関報告を行うための対応手順を明らかにすることによって、医療機関報告の件数増加および質向上につながることが期待される。