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研究内容

メタボロミクス解析を駆使した疾患メカニズムの解明と新たな化学診断・治療への展開を目指す臨床化学研究

疾患メカニズムの解明、診断あるいは治療への展開を目指して、メタボロミクス手法を構築しています。

脂質代謝異常症患者体液中の異常コレステロール代謝物の高感度分析法の構築

コレステロール代謝異常疾患患者体液中の異常コレステロール代謝物のLC/ESI-MS/MS分析ならびに網羅的解析法の構築

細胞膜の主要構成成分であるコレステロールは、種々の生理活性分子の前駆物質であることから、その恒常性維持は生体にとって重要です。しかしながら、各種疾患時など、そのホメオスタシスが破綻すると、血液中や尿中のコレステロール代謝物プロファイルが変化し、通常見られない異常コレステロール代謝物が見られるようになります。我々は、こうしたコレステロール代謝物と疾患との関連を明らかにするため、LC/ESI-MS/MSなどの質量分析法を活用した体液中のコレステロール代謝物の網羅的な解析に取り組んでいます。
すでに、ニーマンピック病C型の患者尿中に、ある種の硫酸抱合型異常コレステロール代謝物が増加しており、その化学診断に有用である可能性を見出しています。また、現在は、誘導体化を用いたコレステロール代謝物の高感度分析や安定同位体標識体を活用した動態解析など、質量分析を活かした臨床化学的研究を展開しています。



疾患時における内因性代謝物の変動解析

キヌレニン経路トリプトファン代謝物、ω-3およびω-6系多価不飽和脂肪酸代謝物に着目した一斉定量系の開発と各種疾患時における変動解析を試みています。

キヌレニン経路は、トリプトファンの95%の代謝を担う経路です。キヌレニン経路の代謝物の多くは、神経系や免疫系などと関連した生理活性を持つことが知られており、様々な疾患との関連が報告されています。疾患時の生体内におけるキヌレニン経路代謝の解析は、病態メカニズムの関連や新規治療法の開発に有用であると考えられることから、キヌレニン経路代謝物を対象とした検討を行っています。

エイコサノイドをはじめとするω-3およびω-6系多価不飽和脂肪酸代謝物は、生体局所におけるホメオスタシスの維持あるいは炎症をはじめとする種々の病態形成に関与しています。近年になり、ω-3系脂肪酸由来抗炎症性脂質メディエーターであるレゾルビンを含むspecialized pro-resolving mediator(SPM)が注目され、創薬ターゲットにもなっています。一方で、ω-3およびω-6系多価不飽和脂肪酸代謝物の代謝・動態は不明な点が多く、そのプロファイリングを明らかにすることができれば、疾患の予防や予後の予測に有用な知見を見出すことができることから、各種疾患時におけるω-3およびω-6系多価不飽和脂肪酸代謝物の変動解析を試みています。

薬物療法の適正化を目指した研究  HPLCやLC/MSを用いる薬物や代謝物の体液中濃度定量法の開発

TDM等への臨床応用を目指し、HPLCやLC/MSを駆使して薬物およびその代謝物の血中濃度測定法を開発しています。 代謝物を含む薬物の血中濃度は、患者の年齢、性別、生活習慣、嗜好、基礎疾患や併用薬などの環境要因と遺伝子多型のような先天的要因の結果として現れる最終表現型を示しています。

多くの場合、薬物の組織濃度と血中濃度が相関するため、血中濃度は、検査値データを含む臨床所見や副作用などの患者情報を組み合わせることにより、薬物の効果と副作用を正確に把握するための重要なパラメーターとなります。そこで、現在、当研究室では抗がん薬、免疫抑制薬、抗生物質等の代謝物を含めた分析法を構築し、臨床検体の測定を行うとともに、各診療科と連携して薬物療法の適正化を目指して研究を推進しています。


薬物-尿毒症物質相互作用に基づく薬物投与量調節に関する新規エビデンスの構築

腎不全時には腎排泄型薬物のみならず、肝排泄型薬物をはじめとする様々な薬物の体内動態が変動します。しかし、尿毒症物質の組織移行メカニズムや薬物の肝取り込み過程等における相互作用に関する情報は少ないのが現状です。当研究室では、薬物トランスポーターに着目して、薬物-尿毒症物質相互作用に関する研究に取り組んでいます。本研究で得られる成果によって、将来的にトランスポーターの輸送阻害、発現変動による薬物相互作用を未然に予測し、腎不全患者に適した薬物投与設計に貢献できるものと考えられます。


薬剤師における副作用等報告制度の認識と実践の実態把握とその推進に関する研究

本邦における医薬品安全性評価体制として、「医薬品・医療機器等安全性情報報告制度」があります。本制度は、自発報告に基づく点や、母数の把握が不可能な点などの限界を有していますが、世界的にも医薬品安全性情報収集の中核を担うシステムです。しかしながら、本システムを介した本邦の自発報告の大部分が製薬企業からのものであり、医療機関からの報告はごく少数です。そこで、当薬剤部では、本制度の利用促進に関する調査・研究を行っています。


妊婦・児への薬の影響に関する薬剤疫学研究

妊婦・児の医薬品使用の安全性に関しては、医薬品の開発段階で情報が得られないことや、その評価基盤が非常に限られるため、世界的にも圧倒的に情報が不足しています。特に本邦においてはその評価基盤が皆無に等しかったために、海外の限られたエビデンスに頼らざるを得ないのが現状です。しかしながら、本邦においても複数の母子コホート研究(BOSHI研究、エコチル調査、三世代コホート調査等)の実施や、リアルワールドデータ(レセプトや電子カルテ情報等)を用いた研究の環境整備によって、妊婦・児の医薬品使用の安全性評価に関する薬剤疫学研究が可能となりつつあります。



我々は、それらのデータを用いて、以下の研究に取り組んでいます。
・妊婦の医薬品使用と児の離脱症候群・奇形・発育・発達との関連
・授乳婦の医薬品使用による母乳を介した児への影響
・小児の発達障害治療薬と循環器疾患発症との関連
・小児の適応外使用の安全性評価

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